参考になる!なる!モデル成功事例レポート

『褥瘡ゼロ』を病院から地域に広げたい静岡市立清水病院の取り組み

静岡市立清水病院

2002年の「医科診療報酬主要改定項目」の「褥瘡対策未実施減算」制度や、 2003年、特定診療費で介護報酬に「褥瘡対策指導管理」が設置されるなど、褥瘡ケアは医療や福祉の現場で今、タイムリーな問題としてクローズアップされています。 その中で効果的な褥瘡対策を実践している静岡市立清水病院の事例をご紹介しましょう。
院内発生だけでなく、在宅での発生率まで下げる、地域と一体になった褥瘡対策を実践。

褥瘡対策委員会を立ち上げ院内横断の組織づくり

看護科長の川口久美子さん  看護師長の牧田年子さん

「一時は院内でゼロにしても、持込みの患者さまで褥瘡のひどい人が多かったんですが、今は持込みもそんなに多くありません」。 看護科長の川口久美子さん。 「寝たきりの患者さんがひどい褥瘡になって病院を訪れるケースはあまりないんですが、 普段元気だった人が急に倒れて、家族が4、5日様子をみているうちに褥瘡がひどくなることが最近多いように思います。」 川口さんの後を引き継いで、清水病院の褥瘡対策委員会のリーダー役として活躍する看護師長の牧田年子さん。 2002年に褥瘡対策委員会をスタートさせてから、一つひとつの活動が実を結び、院内の褥瘡の発生率をほとんど0に近いものとし、 また、訪問介護ステーションなどとの連携で地域の褥瘡発生率を大幅に下げて来ました。

当時、「褥瘡対策未実施減算」の診療報酬改定が発表されてから、施行までの期間はわずか半年。 その中で褥瘡対策を組織的に行っていかなければならないという時間との戦い中で、清水病院はまず、褥瘡対策委員会を立ち上げました。 委員会は皮膚科を中心に医師、看護師、医事課も加わり、院内横断の組織として運営しました。 時間のない中で、組織をつくることから始め、活動と並行して徐々に内容を煮詰めていくという方針で進みました。 その褥瘡対策委員会の一人に、川口さんがいました。

誰にでもすぐに実践できる適切な目標設定と定期的な評価


褥瘡委員会から具体的に目標を設定

委員会ではまず、褥瘡対策を現場スタッフに意識づけるために、 「ギャッジアップは先に足から次に頭を」「車椅子褥瘡予防は90°」「スキンケア褥瘡予防の第一歩一日一回皮膚チェック」「体交は無理せず二人で持ち上げて」 4つの長期目標を立てました。 褥瘡に関する知識がない人でもすぐに実践できる共通のチェック項目があることで、比較的早く浸透しました。 1年生の一番はじめのオリエンテーションでもこの項目は目標として掲げています。 さらに、病棟によっては、実状に合わせて目標を追加しています。 「目標や行動目標を部署別に出していた時期もあったのですが、結果的にはこの4つがきちんとできれば、 かなり予防できるということがわかってきたので、それを徹底させることに戻ってきています。」と、川口さん。 現場スタッフの一人ひとりが実践できるものになっていることが重要です。 また、この目標に対して各部署でどのようにやっているかを委員会で評価することが、院内の褥瘡対策の浸透に効果をあげました。 毎年、1回ずつ、1月頃にチェックして年度末に評価を出すようなカタチで進んでいます。 この評価については4つの目標をさらに具体的に文章を落とし込んだものです。 「チェック項目はあまり多すぎると、評価も大変なので、重複する内容はどちらかにまとめるなど、工夫しました。 ×がついてもペナルティはないですが、そこを重点的にやってもらうようにして、改善につなげています。 有病率にははっきりと効果が出ています」と牧田さんは力強く言います。

マットを空かさないよう徹底した管理

委員会では、機能や効果の進展著しい体圧分散式マットレスも有病率の低減に大きな効果があると考え、褥瘡対策の大きなポイントとしています。 「当初、いろいろな患者さまの症状に対応できるように、いろいろなメーカーのいろいろなタイプのマットを導入しましたが 数年間のうちに患者さんの希望や看護師の意見でアルファプラが増えて来ました。」と当時を知る川口さんは振り返ります。 「それぞれに症状などに対して適している機能はあるんですが、それらの機能を全部網羅しているのがアルファプラだと思いました」と牧田さんが続きます。

清水病院では「どの患者さまがどのマットを使っているか」「どんな機能を持つ、どのタイプの体圧分散式マットレスがその時に何枚ストックされているか」。 これを各病棟からパソコンに簡単な入力をするだけで院内LAN上の「褥瘡防止マット在庫状況」が一目で確認できるようになっています。 また、マットの使用状況をデータベース化することにより、すばやい対応につなげています。 現場だけでなく、それを支える管理者や関連部門の支援があるからこそ、活動しやすい環境が生まれる。 そのためにも委員会の役割は大きいようです。 また、「退院してマットが空きましたけどどうしますかとか、看護師よりもエイドさんのほうが『退院した患者のマットはどのベッドに移しますか』というように、 絶対に空かさないように回したり、今ではみんなを巻き込んでいます」。 現場で実際にベッドメイクを担当するナースエイドのスタッフの意識の高まりを牧田さんは感じています。

「最近は、ケアマネジャーと話していても、褥瘡のことが問題にでてくることは少なくなりました。 昔は病院の中の一部の人しか知らなかったことが、今は一般の人も情報を持っているし、制度もしっかりして来ています。 ものもどんどん充足して来ましたし」。 褥瘡対策の啓蒙のために日常生活の中でできる褥瘡予防のパンフレットを配布するなど、院内だけでなく、地域とのネットワークを進めてきた清水病院。 目指す『褥瘡0地域』は一歩ずつ近づいて来ました。