参考になる!なる!モデル成功事例レポート

チームアプローチによる褥瘡管理のメリット その1

2008年5月24日 
「地域ぐるみで取り組む褥瘡対策セミナー」参加
船橋市立リハビリテーション病院 
生活環境設備担当チーフ 宮本 晃さん

船橋市立リハビリテーション病院はJR船橋駅から車で10分、船橋市立医療センターに隣接して2008年4月に開院した全国でも珍しい公設民営のリハビリテーション病院です (指定管理者は医療法人社団輝生会 68床(2010年には200床))。 『再び輝いて欲しい…それが願いです』をキャッチフレーズに、徹底したチームアプローチを特色とし、褥瘡対策に関してもこのシステムにうまく乗せて成果を出しています。
本誌では、今春新たに配属されたスタッフ向けの教育プログラムが始動するこのタイミングで、
3回にわたり船橋市立リハビリテーション病院の褥瘡対策を追跡レポートします。 第1回目は生活環境整備担当チーフの宮本晃さんに、現在の仕組みやこれまでの活動内容についてお話をうかがいました。

徹底したチームアプローチ

(図1)多職種によるチームアプローチ

船橋市立リハビリテーション病院の大きな特色は、病棟ごとのチームアプローチです。 「看護部」のような職種ごとに区切られた縦割り組織がない代わりに、病棟にひとつずつ結成されたチームでアプローチします。 病棟のチームは医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、ケアワーカー、管理栄養士、ソーシャルワーカー、薬剤師と多職種で構成されており、チームマネジャーが配置されています。 (図1)縦割り組織による職種間の壁を徹底的に取り除き、現場が責任を持ってアプローチをする体制を実現しています。 「チームアプローチの生命線は、教育の充実だと考えています。 どのチームも同じスキルを持っていないと、病棟間にレベルの差ができてしまいますからね。 病院としてのレベルの維持・向上のためには、コアな人だけを教育するのではなく、常に全てのスタッフを同じように教育する必要があるんです。 ですから当院は院内、院外を問わず研修が多いですよ」という宮本さんも、タイカの褥瘡セミナー受講生のお一人。 その縁があって、開院当初からタイカのセミナーをスタッフ教育に組み込んでいます。

個人と環境とケアの三位一体

「褥瘡対策は、個人のリスクと環境のリスクそれぞれに手を打たなければ成功しません」と宮本さんは言います。 「具体的に言うと、個人要因の理解と環境整備とケアの3つを1セットで進めないと成功しない。 このことは、タイカさんのセミナーに参加して頭が整理されましたね。 OHスケールで患者さんの褥瘡発生リスクを測定し(個人の要因)、そのリスクレベルに応じてマットレスを選び(環境整備)、ズレを起こさない動作介助をする(ケア)。 とてもわかりやすいんです。 昨年度はこの内容のセミナーを5回、スタッフ全員を対象に実施しました。 セミナー後のアンケートを読むとスタッフの熱意やアイデアがよく伝わってくる」と言います。 「当院は若いスタッフが多いので勉強熱心で変な先入観がない分、病院のスタンスもシステムも必要なスキルもどんどん吸収してくれるから新しい事は浸透しやすいですね」

システム化して実践する

(図2)褥瘡予防マットレス利用依頼書

宮本さんに『マットレス利用依頼書』(図2)というシートを見せてもらいました。 「褥瘡リスクの高い患者さんに対して、このシートを作成します。 まず病棟の看護師がOHスケールでリスク判定をし、関係者に回覧されると、その患者さんのリスクが周知されると同時に、必要なマットレスが配備されるという仕組みです。
このシートの運用を通して、セミナーで得たスキルは実践されています」。 全ての病棟が同じレベルでこの管理ができている事はすばらしいですね。 では、全ての患者さんに十分なマットレスが行渡るためにはどのような工夫をされているのでしょうか? 「軽度リスク用のマットレスだけを病院で用意し、それ以上のリスクの患者さん向けマットレスは、近隣の福祉用具販売店からレンタルしています。 この方法ならば必要なマットレスを必要な時だけ必要な枚数使用することができるから便利なんです」とは言え、最初から病院向けレンタルシステムが整備されていたわけではなく、 宮本さんの熱い思いが販売店の協力を促した事は言うまでもありません。

ズレを起こさない動作介助の実践

今回の取材に応えていただいた
生活環境設備担当の宮本晃チーフ(左)と
小松佳明さん(右)

「もともと患者さんの機能回復や維持のための意識やスキルがあるものの、褥瘡予防に生かしきれていない一面
がありました。 そこでまず、褥瘡発生の2大原因が圧迫とズレである事を理解してもらい、次にタイカさんの協力で「ズレを起こさない動作介助」の実習を4回に分けて全スタッフに受けてもらい現場で実践しています。 褥瘡に良いとされるケアは他にも良い影響がある事が多いので、スタッフも必要性さえ理解すれば、大きな負担はありませんね。 縦割り組織の病院では、リハビリはセラピスト、褥瘡は看護師みたいに職種によって担当を分けられがちですよね。 でも当院のチームアプローチシステムは、スタッフ全員で褥瘡に良いケアをしようという意識を持ちやすい良い環境だと思います。 ただ、動作介助は訓練が必要ですので、定期的な研修と現場を繰り返して質を上げていきたいですね」
今春新たに加わったスタッフは約100名。 院内の隅々まで教育と環境整備を浸透させるために宮本さんにゴールはありません。
次回は、船橋市立リハビリテーション病院のセミナーに潜入してレポートします。