参考になる!なる!モデル成功事例レポート

連載 その2
情報の共有とレベルキープがチームアプローチの鍵

~現場へのインタビューで感じた、空気のように当たり前に浸透している患者本位とスタッフ間の信頼関係~

3回シリーズでお送りしている船橋市立リハビリテーション病院のレポート第2回目です。 今回は褥瘡対策に奔走する4名のスタッフへの取材を通して、チームアプローチと研修体制の詳細、それらが褥瘡対策にどのような成果を生み出しているかなど、現場の生の声をお届けします。
褥瘡対策セミナー参加者(4名)へのインタビュー。

Interview 01

理学療法士
廣瀬聖一郎さん

「みんなが同じケアを共有できることも重要」

チームアプローチについてどのようなメリットがあると感じていますか?

当院は開院してから2年目であり、まだケア技術は十分とは言えず、ケア技術を高めていくために、ナースやケアワーカー、セラピストが集まって相談しながら検討を行っていくことがあります。 例えば、1人の患者さんの介助方法について、各職種からの視点で相談し、よりよい方法を検討していきます。 このように多職種のメンバーで情報を共有していくことで、質の高いサービスが提供できることもチームアプローチから得られるメリットの一つだと思っています。

常にチームでコミュニケーションを取っているんですね。

朝・夕にミーティングがあり、常に申し送りが行われています。 また、患者さん一人ひとりに対して問題点がある時は、各職種の主担当間で話し合い、チームのメンバーに伝達していきます。 必要であれば、その場で検討することもあります。

褥瘡対策セミナーに関してはどうですか?

とくにズレ力について学ぶのには良い機会でした。 起居・移乗の方法を学ぶという点でも、効果的な方法や福祉用具を使っての移乗は勉強になりました。 いろいろな方法を知る事で、特に片麻痺の方や脊損の方に対しての対処の幅は広がったと感じます。 OHスケールについてもこんなにわかりやすい方法があるんだと勉強になりましたし、上手く利用できたら良いと思いますね。

貴院では通常どのような研修をしていますか?

褥瘡の研修以外に、車いすの研修、装具の研修、転倒予防の研修、嚥下の研修なども行っています。 シフトの都合で受けられないスタッフもいるので、一つの研修をできるだけ複数回実施するようお願いする事もあります。 前回参加したスタッフもわからなかったらもう一回受講する事もできますしね。 今後もスタッフのレベルを高めていくために様々な研修会を開催していくと思います。

スタッフ間のレベル差はありますか?

どの病院や施設でもあると思うのですが、スタッフ間での差はありますね。 ただ、どのレベルを高い・低いと考えるのは難しいと思います。 10年目の人も1年目の人もできるような介助方法はあると思うので、そのラインは維持しようとしています。 その方法が同じであればどの職種も迷う事なくできますからね。 ケアのレベルを高くすることも必要だと思います。 ハイレベルのスタッフが数人いる事も必要ですが、全スタッフが同じようにケアを提供できる事も大事なのではないかと思っています。

研修の案内はどのようにされるのですか?

各病棟でお知らせが掲示されるのに加えて、電子カルテにも記載されます。 また当日は朝のミーティングでチームマネジャーから口頭でも伝えられます。 委員会からの告知は周知されるようになっていて、 院外から講師を招くような研修を実施する時は、病院もサポートしてくれるので、関心度も熱意も高まった研修ができますね。

近隣へはどのようなアプローチをしていますか?

小さなステップから始めています。 例えば、在宅でのケアを理解していただくために、退院するまでの間にご家族にケアの方法を教えることがあります。 ケアマネやヘルパーさんには調整して来院してもらい、ご自宅に戻ってから必要な事を、在宅に関わるスタッフに伝えていく機会も設けています。 患者さんはそれぞれ個別の問題を抱えているので、チームのメンバーがそれぞれの専門分野をリードしてチーム内で補っていく形ですね。 また、船橋南部在宅療養研究会の在宅向けのケアの勉強会に参加したりしています。 今は小さな活動ですけど、広まっていくことで大きな力に変わっていくと思っていますので。

褥瘡対策に対してメリットはありますか?

今回の研修では、褥瘡対策として圧やズレを中心とした講義・介護方法の実技やOHスケールの説明についてでしたが、この他に福祉用具、食事(栄養)など様々な事が関わっていますよね。 チームでの褥瘡に対するアプローチがうまく運用されているかを検討する上で指標になるのではないかと思います。


Interview 02

ケアワーカー
本田大将さん

「患者さんの生活の中で問題解決し、改善していく意識が大切です」

チームアプローチについてどのようなメリットがあると感じていますか?

チームで最低限のレベルが共有されているので、患者さんの側をちょっと離れる時に、OT(作業療法士)やPT(理学療法士)に代理を頼むことができます。 ナースとケアワーカーだけ患者さんを見ているわけではなく、病棟全体で患者さんのことを見ているため行き届いたケアができます。

チームアプローチは褥瘡対策でも成果を出していますか?

褥瘡は、トイレや入浴の時など、服を脱いだ状態でないとなかなか見つけるタイミングがないと思います。 そのため発見するのはナースやケアワーカーになりますが、そのあとチームで情報を共有して患者さんを守ってあげることができるという事が、チームアプローチの素晴らしいところです。 褥瘡が発見されたらセラピストも加えて、リハビリする時にここに褥瘡があるからあまり負荷をかけないようにしようとか、そういうことができています。

半年前に移って来られたという事ですが、他院と比べて何が違いますか?

以前勤めていた病院では、褥瘡対策もしっかりしていて良いマットレスも使っていましたが、当院よりもはるかに大きなポケットの褥瘡患者がたくさんいました。 高齢者の認知症病棟だったので寝かせたままの患者さんも多いので余計ですね。 さらに「褥瘡はナースのケアで治していく」という認識だったので、動作介助などに関してアプローチしようとする発想はなかったですね。 この薬を塗って、表面はこうだけど奥はこうなっているというようなドクターとナースによる医学的対応という感じですね。 患者さんの生活の中で問題を発見して改善していく意識はなかったので、今日のような勉強会はとても参考になります。 良い悪いというよりも、そういう発想自体がありませんでした。

スタッフ間のレベル差はありますか?

新人研修などを通して、最低限の技術、意識のレベルが共有されているので安心できます。


Interview 03

看護師/褥瘡対策委員会メンバー
渡邉彩子さん

「たった一言でスタッフ間の情報共有ができることはすごいと思います」

チームアプローチは褥瘡対策にどのような成果があるとお考えですか?

褥瘡対策委員にも病棟にも、ナース、ケアワーカーだけでなく、薬剤師、ST(言語療法士)、OT、PTもいる事に驚きましたし、本当にチームだなって感じます。 患者さん一人ひとりに対して情報を密に共有できているところが成果だと思います。

ナースやケアワーカーだけだと患者さんを見守れる限界があると思いますか?

そうですね、ありますね。 本田さんは褥瘡を見つけるのはナースやケアワーカーとおっしゃっていましたが、 私はナースやケアワーカーはとにかく日常業務に追われ、全体を見なければという意識が強く、細部の観察が十分にできていないと思います。 むしろOTやPTの方は、例えば40分間一人の患者さんだけに向き合う事ができるので、リハビリ中に患者さんから「さっき看護師さんが忙しそうだから言えなかったけど、ここが痛い」と話ていただけたりして、 それをリハビリスタッフから教えてもらう事もあります。 その部分を見てみるとあざができていたりとか、移乗の時にこすってしまって赤くなっていたり・・・スタッフの誰かが患者さんから聞いたたった一言で、スタッフ間の情報共有ができる事はすごく良いと思います。

貴院では通常どのような研修をしていますか?

とろみ剤の研修からリハの研修まで多種多様で、毎週2回くらいあるのではないでしょうか。 基本的に全職種対象でアナウンスされますね。 すごく気になるけど参加できない時は、チーム内で参加した人に内容を確認しています。

近隣へはどのようなアプローチをしていますか?

病棟にいるので実感が湧きにくいのですが、月一回の病棟カンファレンスの時に、退院後の患者さんの様子を訪問リハのスタッフから伺ったりしますね。


Interview 04

理学療法士(新人)
板橋健太さん

「共通の院内研修のおかげでスキルアップできるのが嬉しいです」

チームアプローチについてどのようなメリットがあると感じていますか?

新人なのでまだ右も左もわかりませんが、チームでやっているという感じがとてもあります。 多職種の方ともゆっくり話ができるのが良いです。 特にドクターと話ができるのがうれしいです。 ドクターを中心にチームで話すことで、治療方針が統一でき、良いアプローチに繋がっていると感じます。

貴院では通常どのような研修をしていますか?

新人には、全ての職種の新人を対象とした院内研修があります。 シーツ交換やおむつ交換、入浴ケアなども学びました。 共通の院内研修を行う事により、レベルが統一されると感じます。 2年目の先輩スタッフとのレベル差はまだまだ感じますが、同期のスタッフ間で差を感じないのは共通の院内研修をしているからだと思います。

近隣へはどのようなアプローチをしていますか?

患者さんのために自分のケアの質をもっとあげて、早く先輩に追いつきたいです。


まとめ

ベテランの方から新人スタッフの方まで、情報共有と必要スキルの習得、意識レベルの統一が浸透しているので質の高いサービスが提供できています。 このことが患者さんの気持ちを汲んであげられることにも繋がり、「向き合う看護」となっています。 チームアプローチのヒントを見た気がします。