参考になる!なる!モデル成功事例レポート

ほめることが大切。仲間を増やして褥瘡ゼロを目指します。

医療法人徳洲会 新庄徳洲会病院
皮膚・排泄ケア認定看護師
八鍬 恵美さん

これほど医療が進歩している中でも、まだまだ褥瘡に苦しんでいる患者さんがいます。病院では予防や早期発見、治療ができても、在宅や施設で療養する患者 さんに必要なケアができるとは限りません。
 褥瘡に対する知識や情報を地域の医療関係者、介護者が共有していくためには、情報発信者の大きなエネルギーが必要です。自らの褥瘡への取り組みを、自 然な口調で淡々と語る新庄徳洲会病院の皮膚・排泄ケア認定看護師・八鍬恵美さん。決して、自分が先頭に立つのではなく、それに関わるすべてのスタッフが スムーズに参加できるように、まず、院内の組織や環境を整備していきました。そして、その目は今、地域に向けられようとしています。

仲間作りの感覚で褥瘡対策

褥瘡対策のまとめ役の八鍬さん

 山形県の内陸北部、最上地区にある新庄徳洲会病院は、ケアミックス型病院として、平成10年に開院しました。7階建ての病棟には270床のベッドが用意され、 そのうち44床が医療療養、48床が介護療養に当てられています。また、院内には居宅介護支援所、訪問看護ステーション、訪問介護ステーションを備え、さ らには、老人保健施設やグループホームも併設し、地域の中核を担う医療機関として機能しています。
 この病院で褥瘡対策のリーダー役を担うのが、八鍬恵美さんです。
 2008年にスタートした宮城大学が運営する「宮城認定看護師スクール」に第一期生として入学。2009年に皮膚・排泄ケア認定看護師の資格を取得し ました。皮膚・排泄ケア認定看護師としてはまだ2年目ですが、院内で唯一の皮膚・排泄ケア認定看護師として、それ以前から取り組んでいた褥瘡対策のまと め役となり、日々頑張っています。また、地域での勉強会を企画・運営したり、在宅褥瘡創傷ケア推進協会東北総会へ参加するなど、地域のリーダーとしても 積極的に取り組んでいます。
 新庄徳洲会病院の褥瘡対策委員会は笹壁弘嗣院長を委員長とし、その下に看護師の委員長と各委員が配されています。この委員会構成においては、リーダー 役の八鍬さんもその委員の一人に過ぎません。「誰がいなくなっても褥瘡対策が進むようにとの院長のお考えで、こういう組織になっています」。また、院内 では褥瘡対策委員の他に、病棟ごとに褥瘡係の看護師を立て、そこに介護士や看護師が一緒になって、病院ぐるみで取り組んでいます。「当院では仲間を増や す感覚で褥瘡対策に取り組んでいます。このような体制で対応すれば、看護師同士、介護士同士のコミュニケーションもあるから、一人から全員に話を伝える よりも、すぐに話が伝わります。一番大切なことはチームワークです。抱え込まないことが大切です。一人では絶対に褥瘡対策はできません」。さらに各病棟 を担当している栄養士とも連携して、栄養相談ができる体制を敷いています。
 一方で、スタッフがモチベーションを低下させないための細やかな気配りも忘れていません。「例えば褥瘡を何回も繰り返している患者さんでも、治るたび にみんなで拍手します。みなさんのケアが大変すばらしいって。私だってほめられた方がうれしいですから」。その効果もあって、看護師、介護士を通じて、 スタッフのレベルも上がってきました。「この患者さんは動けないようですが、このマットレスでいいですか」「仙骨に発赤があるので、後で見てください」 。勉強会で得た知識と病院を結ぶコミュニケーションの円滑化によって、必要な時には八鍬さんに声がかかるようになり、褥瘡の予防や早期発見につながっています。
 現在、毎週月曜日にOHスケールを使い、褥瘡のリスクアセスメントを行っています。「看護師全員がアセスメントをできるようにしています」。また、マッ トレス導入時に頻繁に勉強会を実施した効果もあり、マットレスは看護師が評価し選定しています。「回診時にアドバイスすることもありますが、間違った選 択はほとんどありません」。

介護力アップに必要な福祉機器

 八鍬さんのタイカとの出会いは3年前、マットレス整備を検討していた時に褥瘡学会地方会でタイカを知り、院内セミナーの相談をしたころにさかのぼりま す。その後、マットレス整備の一環として体圧分散式マットレス「アルファプラ」を導入。現在ではエアマットも導入し、さまざまなタイプを患者さんの症状 にあわせて使い分けています。
 「麻痺があっても動ける方にはアルファプラ、介護度の高い方にはエアマットを使っています。しかしエアマットの場合、患者さんにもよりますが、柔らか すぎて身体が沈み込んでしまってかえって動きを制限してしまうことがあり、それが褥瘡の発生につながった例もありました」。
 新庄徳洲会病院では、患者さん一人ひとりに対してマットレスなどの福祉機材を細かく評価しています。当社でもウレタンとエアのハイブリッドマットレス を八鍬さんのもとで試用していただきました。「片麻痺のある患者さんで、エアマット使用時は沈み過ぎるためか、自力で体位変換をすることはなかった方が います。ところが、ハイブリッドマットレスに変えてからは安定性があって動きやすいようで、柵をつかんで横を向くことが出来るようになり、ADLが上がりま した。ターミナルの患者さんも寝心地がよかったのか、表情が穏やかになり、痛みを訴えることもなくなりました」。
 また、ポジショニングクッション「アルファプラ・ウェルピー」も関節拘縮などの状況改善に対して評価が高く、院内で使用するだけでなく、退院し、在宅 療養に復帰する患者さんにもお薦めいただいています。
 「特に在宅での介護を見ていると老老介護が多いのが現状で、介護力もあまりありません。ですから企業の皆さんには、介護される方の負担が少しでも軽減 できるような製品を開発し、商品化をしていただきたいと思います。そういう商品があれば私たちもどんどん地域に紹介していきます。タイカさんにも、患者さん、 介護者を第一に考えた商品作りを期待しています」。

地域に根を下ろした地道な活動を

 地道な努力とともに根づいて来た新庄徳洲会病院の褥瘡対策。八鍬さんの視点は病院から地域に広がっています。「褥瘡の治療は自施設だけでうまくいけば 、それでいいというものではありません。退院後や他の施設へ転院した際に、褥瘡が繰り返し発生してしまうようでは困ります。地域全体で褥瘡対策に取り組 めるように、まず、啓蒙活動が必要なんです」。実際に、個人医院で褥瘡治療をして、手に負えないからと、亡くなる寸前に入院された患者さんがいました。 「悲惨な褥瘡でした。その時、もっと早くに打つ手があったのではないかと思い、褥瘡に対する知識や認識の必要性を強く感じました」。
 現在、病院系列の老人健康施設を含め、特別養護老人ホームや老人健康施設など、近隣の5つの施設で褥瘡勉強会を開催しています。また、院内で行われる 勉強会にも近隣の訪問看護ステーションの方々に「ぜひご参加ください」と呼びかけています。参加するステーションも徐々に増え、地域の褥瘡に関する情報 や関心も大きくなりつつあります。
 「悲惨な褥瘡で、落とす必要のない命を落としてしまうケースがまだあります。こんなに医療が進んでいるにも関わらず、在宅や施設にはまだまだ褥瘡で亡 くなってしまう患者さんがいます。私たち医療者の知識や情報の不足も原因の一つです。もっと早く手が打てるはずです。大きな活動はできないかも知れませ んが、この最上地方で悲惨な褥瘡が少しでもなくなるように、地道な活動を通して、底上げしていきたいですね」。